櫻尾尚平
広島大学理学部卒業後、酒類総合研究所にて1年学び、玉櫻酒造入社。
母屋の山手にある、薄暗く広い蔵は、子供の頃には 格好の「かくれんぼ」をする場所でした。といっても、かくれんぼができるのは夏の間だけ で、冬になると酒造りが始まります。
小学校低学年くらいの頃は、杜氏さんや蔵人さんに 遊んでもらう事も多く、ひねり餅を焼いてもらったり、麹をつまんで食べて みたりしていました。まだ温かかった麹は、ほのかに甘くてちょっと歯ご たえがあったのを今でも覚えています。酒も味見していましたが、牛乳の方が好きなお年頃 でしたので、味はうろ覚えで、今となっては残念です。
中学、高校になると、さすがにかくれんぼはしないし、人が働いている場をうろつくような事もなくな り、蔵とは縁が切れたような状態でした。
大学生になり、人目をはばからず酒が飲めるようになってからも、ビールやウイスキーばかり飲んでい て、日本酒を好んで飲むということはありませんでした。
4年生になり、研究室に配属になったのですが、そこでお世話になった先生が日本酒好きで、酒蔵の息子なら、酒が好きだろうと言って、色んな酒を飲ませてくれました。ここで、一気に日本酒に目覚めました。実家に帰った時は、玉櫻を段ボールいっぱいアパー トに持って帰るようになり、友達と一緒に飲み比べたりしていました。そうなってくると、後は予定されていたかのごとく。一旦切れたかに思えた酒蔵との縁でしたが、今度は 自分が蔵の中で働くようになりました。
酒を通して、色んな方と知り合い、助けていただいてばかりいます。技術的には杜氏さんには遥かに及ばず、自分の酒造りには全く自信がありませんが、できたお酒を嬉しそうに飲んで下さる方や、応援してくださる方のおかげで、酒造りをさせていただい ています。
造りが終わるとほっとしますが、稲刈りの時期になると、そわそわしてきます。良い酒っていうのがどんな酒かはまだわかりません が、今年は、去年よりも良い酒を造ろうと思って、毎年酒造りをしています。



