伝統文化の奥深さ実感~日本酒造りを楽しむ会~
まだ寒さの残る三月。
出雲市の木綿街道一角にある老舗「酒持田本店」酒蔵では、会員たちが麻袋を使って一心に酒を搾っていた。一滴一滴したたり落ちる極上の酒。寒さも忘れ、顔がほころぶ。会員たちの待ちに待った瞬間だ。
同会は一九九八年、旧平田市の自営業者、公務員らが酒米の田植えから、稲刈り、仕込み、蔵出しまで、オリジナルの酒造りを楽しもうと発足。
活動は毎年五月、同市本庄町の水田で、ひざまで泥につかりながら酒米・山田錦の田植えから始まる。「今シーズンはどんな酒に仕上がるのか」。会員は、一年後の蔵出しに思いをはせる。
十月には稲刈り。日々の天候を気に掛けながら育った酒米が「見事に成長した時の収穫の喜びも大きい」と田中浩史会長(45)は言う。
収穫した酒米は、同本店のベテラン杜氏(とうじ)の腕に託され、寒仕込み、搾りと、会員も手伝いながら作業は進み、待望の蔵出しを迎える。
同じコメと水を使っているはずなのに、酒の味は年ごとに微妙に異なり、会員たちは日本伝統の文化の奥深さと、物作りの大変さをあらためてかみしめる。
一粒のコメをわが子のように思って酒造りに打ち込む杜氏たちに接し、「食べ物や自然に対して謙虚になり、感謝する心の大切さを教えられた」(田中会長)と話す。
会員たちは、日本酒に抵抗がある人に、手塩にかけて仕込んだ酒の良さを知ってほしいと願う。昨年、初の試みとしてフランス料理と日本酒を楽しむ会を企画し、ミスマッチな新鮮さが女性にも好評だった。
「平田の特産品とともに試食する会などを企画し、平田と日本酒ファンを増やしたい」
田中会長は、会員たちの自信作、純米吟醸生「濃酒井」と純米吟醸「雨田笥」、純米酒「萠」の三銘柄の美酒を前に、思いを語った。
-平成17年8月3日(水)山陰中央新報転載記事-



